奴隷戦士


「たまには息抜きでもしたら、紫朗」


事の発端は花ちゃんのその言葉だった。


前に言ったように、ぼくは寺に3日に一度、お経を唱えること以外、居ても特にすることがない。


強いて言えば、ご飯を食べて、風呂に入って、寝ることくらいだ。


それ以外の時間はだいたい道場で稽古をしたり、鍛練をしたり、みんなと談笑したりする。


彼女はそんなぼくの生活をずっと見てきたのだろう。


ふいに花ちゃんが、剣を振っているぼくにそう言った。


「息抜き?」


ぼくは手を止め、頬から垂れる汗を拭い、花ちゃんを見た。


「どうしたの、その恰好?」


彼女は淡い紫の浴衣を着て、髪を出かけ用に結っていた。


いつも適当に後ろで一つに結っているのしか見たことがないぼくは、その浴衣と少しおめかしをして、しおらしく見える花ちゃんを見て驚く。


「ふふ、あたしも女子らしく見せようとすればできるんだからねー?」


彼女はそう言って袖を口元へ持っていく。


「う、うん」


正直、今の姿見ただけでも息抜きになる。


「紫朗も祭りに行ったらどうだい、行くのなら連れてってやるよ」


すっかり見惚れていたぼくを我に返らせたのは、師匠だった。


「祭り、ですか?」


おうよ、と師匠は二カッと笑う。


「俺と嫁はちょいと別の用事があってな、その近くで祭りやってんだと」


「あぁ、それで花ちゃんのお守りってことですか」


「まぁ、そんなとこだ」


「ちょっと紫朗、それどういう意味よ」


花ちゃんがおめかしをした顔でキッとぼくを睨む。


いつもと違う顔だけど、こちらの顔も好きだと思った。


「いや?ぼくに丁度いい役だなってことだよ」


ぼくが言った意味深な言葉に、彼女はキョトンとする。


師匠の眉毛が少し動いた。


「てことで、ぼくも行きます」
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