奴隷戦士
うつむいている彼女の顔は、よく見えない。
「ねぇ、花ちゃん」
名を呼ぶと、彼女は肩をびくっとさせた。
チラリと髪の間から見える彼女の頬がまだ赤い。
――愛しい、と思った。
「あのね、」
聞いて、と言おうとしたところで、花火が上がった。
ピュー、ドドンと音がして周りがざわめく。
「わぁ…」
花火に圧倒されている花ちゃんを横目で見ながら、花火を見る。
先ほどのことなんて忘れているよう。
「綺麗ね」
パラパラと花火が散った。
「そうだね」
ぼくの言葉と一緒に花火が闇に消えていく。
なんと儚いものだろう。
さっきまで空に打ち上げられて、空一面に、綺麗に模様を作っていたというのに。
「紫朗になら、大丈夫」
「ん?」
不意に彼女が言った言葉がよく分からなかった。
「な、」
「おぉ、やっと見つけた」
なにが?と聞こうとして、今度は師匠の声に邪魔をされた。
「帰るぞー」
花火はまだ途中だったので、後ろ髪ひかれる思いでぼくたちはその場を後にした。
「紫朗、お前も罪なやつだな…」
「ぅえ!!?」
急な言葉に、ドキリとした。
花ちゃんが便所に行きたいって言うから、ぼくらもついでに行ったところ、師匠が用を足した後、ぼくがまだ途中なのに言った。
その質問に驚きやいろいろ隠せず、あやうくションベンを色んな所にぶちまけてしまいそうだった。
一体何のことを言っているのか、まったくわからない。
「罪?」
なにか人の道を外してしまうようなことをしただろうか。
ぼくはあたふたしながら身だしなみを整え、手をじゃぶじゃぶ洗いながら師匠に言う。
ドクドクと心臓が爆発しそうな勢いで動いている。
「なんだ、気づいてねえのか」
「え!?なに、何が!?」
師匠は手を顎にあて、ぼくを見ながらニヤニヤしていた。
そんな顔を見てしまうとさらに、恥ずかしくなって、何か言葉を発そうとしたけど、何も言えなくなってしまう。
「だが、俺が認めた男じゃないとダメだ!」
何が?
彼の言葉にさらに混乱した。
一体、師匠は何を言っているんだ、何の話をしているのか全く分からない。
ニヤニヤしていたかと思えば、急に真面目な顔をして言う師匠の意図していることが分からず、自然と眉根が寄る。
俺が認めた男じゃないとダメ?
何が?
俺が認めた、ということは、それはつまり、師匠の剣を極めろということだろうか。
「なんだ、やる気満々じゃないか」
眉根を寄せたまま師匠の意図を考えて、その言葉を聞くと、やはりそういうことなのだろうか。
「よく分かんない…」
師匠が盛大に笑った。
こちらは笑い事ではない。
結局、師匠の意図は分からずじまいのまま、ぼくたちは帰宅した。
その後、仲間に勝つことができるようになったぼくの次の目標は、師匠に認めてもらうこととなった。