奴隷戦士
そんなことがあった僅か三日後。
それは起こった。
その日は稽古が終わった後、仲間と他愛もない話をしている時だった。
今日は師匠とその奥さんが一緒に出掛けていたから、道場には大人がいなかった。
「なーなー、お前さー、紐紫朗ー、いつから花ちゃんとそんな関係になったわけ?」
「「えっ!!?」」
花ちゃんと声が重なった。
「そこんところの話、聞かせろよ」
「それいいな」
「いや、俺は辛くなりそうだから帰る…」
なんて、ぼくと花のことを知りたがる奴もいれば、知りたくないといって帰っていく奴らもいた。
当のぼくは、そんな恥ずかしいことに耐え切れるわけもなく、飛び出し、走った。
「ちょっ、紫朗!もう、あんたたち!やめてよね!恥ずかしいんだからね!」
後ろで怒ったような、照れたような花の声が聞こえて、無償に幸福感があふれた。
「あ、紐紫朗!…え?」
走っていると廊下ですれ違った仲間に微妙な顔をされ、ぼくはそんな彼をあとにする。
「なんだあいつ、にやにやしてたぞ」
なんて声が後ろからきこえてきたけど。
結構ぼくは重症なのかもしれない。
バタバタ走って逃げて、月がよく見える縁側へ座った。
「まったく、ほんと男ってガキねー」
ふんっと鼻息を荒げて、花ちゃんはぼくの隣に座った。
いつの間に追いついたんだろう。
速いな。
「ぼくはガキじゃないぞ」
「あら、どうかしら。ガキじゃなかったらあの時、ここに逃げずに質問に答えているはずなんだけど…」
花ちゃんの言葉に「うっ」と言葉がつまった。
あははと彼女が笑う。
月に照らされたその横顔はとても綺麗だった。