ビロードの口づけ 獣の森編
「奥様の香りって、ジン様がお選びになっただけあって、すごく濃厚ですね」
「ミユにもわかるの?」
「はい。私も獣ですから。すごく甘くておいしそうな香りです」
「え……」
背筋を冷たいものが走った。
獣たちは、その香りに酔わされて、力を得るために人の女を襲って血肉を貪る。
ここはそういう獣たちの住み処だという事を、すっかり忘れていた。
「あの……。ミユも人の女を食べたいと思ったりするの?」
「え?」
恐る恐る尋ねると、ミユは大きな目をぱちくりさせて、次の瞬間クスクスと笑い始めた。