ビロードの口づけ 獣の森編
「やだ奥様。怖がらせてすみません。甘くておいしい果物のような香りというつもりだったんです。獣の女は人の女を襲ったりしません。私も奥様を食べたりはしませんのでご安心下さい。人の女を襲うのは力を必要とする男だけですから」
獣社会は男と女で、社会への役割が明確に分担されている。
女は獣社会の繁栄と維持のため、子どもを産んで育てるのが役割だ。
そして男は社会とその女たちを守り養うのが役割だ。
ジンが王となるまでは外部の社会は全て敵で、男たちは外部社会を利用する事はあっても、獣社会と女子どもを守る事を一番に考えていたようだ。
男はより強く優れた能力を持つ者が、仕事にも恵まれ多くの報酬を得る事が出来る。
そのため手っ取り早く力を得ようと、人の女を襲ったりするのだ。
「やっぱり優秀な男を女は選びますから」
「優秀じゃなくても、好きな男を選ぶ事はないの?」
「そういう女もいますけど、それも男がある程度優秀でないと共倒れになっちゃいます」