ビロードの口づけ 獣の森編


 子どもを産んだ女は、子どもたちと一緒に一カ所で共同生活を始めるからだ。

 話を聞く限り、結月というのは人間の結婚とは違うようだ。
 獣たちに家族や夫婦という概念はないらしい。

 ”クルミが選ぶ”という事にジンがこだわっていた理由も分かった。
 兄が婚約者だと知れた時も、五年前の獣と食われる約束をしていたのかと訊かれた時も。

 そして最終的にクルミに選ばせたのも、ただの意地悪ではなかった。
 男のジンには選択権がないから、女のクルミに選ばせたのだ。

 結月というのは子どもを作るための行事みたいなもので、そこに恋愛感情は希薄な気がする。
 それがクルミを不安にさせた。

 次の満月が来たら、ジンは多くの女に誘われるのだろう。

 元々社会制度も習慣も全く違う種族なのだ。

 ジンを独り占めしたい。
 他の女と交わらないで欲しい。
 そう思うのは、人社会の常識や習慣に捕らわれている自分のわがままだと分かっている。

 けれど、やはり……。

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