ビロードの口づけ 獣の森編


 朝食こそ一緒に摂ったものの、その後ジンは夜まで公務に追われていて、日中は顔を合わせる事もなかった。

 長い間人社会に出ていたので、そのツケが回ってきたと言っていた。
 王はやはり忙しいらしい。

 夕食を一人で摂り入浴を済ませたクルミは、慣れない環境での疲れも手伝って早々にゆうべの寝室で横になっていた。

 知らない場所で真っ暗なのは不安なので、窓のカーテンを少しだけ開けておいた。

 その隙間から月明かりが差し込んでいる。
 もうすぐ満月なので結構明るい。

 横になったものの眠れないまま、壁や床に当たっている青白い月明かりをぼんやり眺めていると、出入り口の扉が静かに開いた。

 片肘をついて身体を起こし、そちらを向く。
 扉の側に黒い獣がたたずんでいた。

 月明かりで輪郭が青白く浮き上がっている。
 緑がかった金の瞳が真っ直ぐこちらを見つめて、音もなく部屋に入ってくる。

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