ビロードの口づけ 獣の森編


 そんな冷たい政略結婚の末に相思相愛であるクルミの両親は、奇跡のような存在ではないだろうか。

 クルミはジンの胸に頬を寄せた。


「私、お母様と約束したの。きっと幸せになるって」


 ジンがクルミの髪を撫でながら尋ねる。


「あんたはお人好しだな。母親を嫌いにならないのか?」

「私はお母様が好きです。子どもの頃からお母様がお父様を愛している事は知っていました」


 伏せっている事が多く滅多に顔を合わせる事のない母だが、たまに体調のいい時にはクルミを可愛がってくれた。

 抱きしめてキスをして「クルミはお利口さんね」と頭を撫でてくれた。
 そして父の事を話して聞かせた。

 母やクルミを放ってほとんど家にいない父をクルミが尊敬できたのは、母が父の素晴らしさを話してくれたからだ。

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