ビロードの口づけ 獣の森編


 夜目の利くジンには、今や一糸まとわぬクルミの姿がはっきりと見えているに違いない。

 その瞳に見つめられるのも、唇や手指が肌に触れる感触も、たまらなく恥ずかしいのに、身体は期待に熱くなる。
 ジンに愛される喜びを知っているから。

 クルミはジンの頭を抱き寄せ、耳元に唇を寄せた。


「あなたの望むままに、私の全てを汲み取って下さい」
「いい心がけだ」


 そう言ってジンは、クルミの胸を掴みながら、耳たぶを軽く噛んだ。

 その後は一晩中ジンに愛されて、気を失うように眠りについた頃には、部屋の中を満たす闇が薄れ始めていた。

 欲求を満たしてご機嫌な黒い獣は、目を細めてクルミの頬に額をすり寄せてくる。

 獣姿のジンは本当に素直でかわいいと思う。
 言葉は話せないが、態度と仕草で気持ちが伝わってくる。
 本当のジンはこっちなのだと信じたい。

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