ビロードの口づけ 獣の森編


 朝食を終え、ジンは執務室に、クルミはミユと共に自室へ向かう。
 扉を開けようとした時、別の侍女が来客を知らせに来た。

 獣の森にわざわざやって来るもの好きな人間は、まずいない。
 元々知り合いも少ないクルミは心当たりもなく、首を傾げた。

 そこへ使用人の男性と共に大きな荷物を抱えたコウがやって来た。
 ほんの数日ぶりだが、見知った顔に出会えてクルミの顔はほころぶ。


「コウ。こんにちは。今日はどうしたの?」

「クルミ様が外に出られなくて退屈しているだろうからとジン様に言われて侯爵家から色々持ってきました」


 コウも人懐こい笑顔を浮かべて答えた。

 荷物を部屋に運び込んでもらい、早速中を確認する。
 厚紙で出来た大きな箱には、クルミがよく読んでいたお気に入りの本や百科事典と手芸用品が入っていた。

 モモカと一緒に選んで箱詰めしてくれたらしい。

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