ビロードの口づけ 獣の森編


「わざわざありがとう。忙しいんでしょう?」

「いえ。いつもと変わりありませんよ。侯爵家の皆さんも元気です。最近は旦那様がよく家にいらっしゃるせいか奥様の体調もいいようですし」


 コウはニコニコ笑いながら近況を語ってくれる。

 その本性を見た事はないが、コウも獣だ。
 結月で女にアピールしたい年頃ではないだろうか。


「コウはお目当ての女の子はいないの?」
「え?」


 一瞬キョトンと首を傾げた後、すぐに納得したのか、コウは大きく頷いた。


「あぁ、結月の事ですか。オレはまだまだ女を養える器量はありませんよ。だから平常通りです。それに人社会で生活してる時間の方が長いから子孫繁栄のためっていうのがピンと来ません」


 子どもの頃から侯爵家で下働きをしてきたコウは、本人曰く獣社会の方がよく分からないという。

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