ビロードの口づけ 獣の森編
ライが壁をコツコツと叩きながらぼやく。
「こんな人気のないところなら、私の鼻に頼るまでもなかったね」
結局、壁や床にからくりはなく、あっさり突き当たりまでたどり着いた。
行き止まりだと思ったそこには、地下に向かって石の階段が伸びている。
クルミの香りはその先を示していた。
真っ暗闇の中、周りの見えないクルミが足を踏み外して転げ落ちてはいないか心配になってくる。
ライが灯りを掲げて階段の下を照らす。
階段はそれほど長くはないようだ。
クルミの部屋は二階なので、ちょうど一階に下りるくらいの長さだ。
階下の床が見えて、そこに転げ落ちたクルミの姿もなく、少しホッとした。
階段を下りると、すぐ目の前は壁になっていた。
通路は左に真っ直ぐ伸びている。
再びライが灯りを掲げてみたが、今度はクルミの姿はおろか通路の終わりも見えなかった。