ビロードの口づけ 獣の森編


「クルミ様って案外活動的なんだね」


 揶揄するライに、ジンは吐き捨てるように言う。


「あいつはおとなしくしろと言っても、おとなしくしていた事がない」
「へぇ、意外だなぁ」


 クスクス笑うライの他愛もない話に相槌を打ちながら、クルミの香りを辿って暗闇の通路を進む。

 石造りの古い通路は二人がやっと並んで歩けるほどの幅しかなく、天井もジンの頭すれすれの高さしかない。
 クルミの部屋からの位置関係からして、どうやら城の裏手に向かっているようだ。

 獣王の城は森のほぼ中央に建っている。
 城の裏手にも広大な森が広がっていた。

 城の裏手に何があったか、実のところジンは把握していない。
 この通路が城の敷地外に通じていない事を願うばかりだ。
 クルミが城外に出る危険は回避したかった。

 しばらく通路を進んだ時、先が明るくなっているのが見えた。

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