モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
区切りがいいからと、次の週から
早速、美雨は村嶋 美登のところで
事務のアルバイトをすることになった

「へぇ~、たいしたもんだな。さすが、元大手商社にいただけの事あるなぁ」

美雨が次々と溜まった書類をパソコンで
整理していく様を見て、美登は一頻り感心していた

「こんなことくらいしか、出来ませんけど…あの必要でしたら猫探しでも何でもやりますから言ってください」

美雨の言葉に高らかに笑うと

「そうだね、必要な時はお願いするよ」

いつもの明るい調子で美登は言った
ふと、美雨は気になっていたことを思いだし
美登に訊ねた

「あの…、あの日どうして雑貨屋にいらしたんですか?」

「えっ、あ、ああ…それは美雨ちゃんに会うためにと言いたい所だけど、たまたま、近くで用事があったんだ。だから、驚いたよ。あんな事になってるなんて」

「そうでしたか…」

と、納得しまた書類を整理し始めた美雨は、
美登の表情が少し強ばった事に全く気付く事はなかった










午前中があっという間に過ぎ
美登が近くに旨い定食屋があるからと
事務所を出ようとした時、杜が現れた

「おい、お前も行くぞ、昼飯」

「あんた、何でいるんだよ」

美登の誘いは全く無視して、美雨に問いかける杜

何となく、美雨が答えかねていると

「詳しい事は昼飯食いながらな、ほら、あの店混むんだから急ぐぞ」

と、言うと美登はさっさと行ってしまった
動けないでいる美雨に

「混むんだってよ」

ぶっきらぼうに言うと、杜も後に続いた
美雨は少し、ほんの少し
杜がそう冷たい人間ではないのかなと
思い始めていた





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