モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
***


真山は折角、豆から挽いて淹れた珈琲にも
口をつけず、色んな事を頭で整理していた

あの日
岡崎といういかにも若そうな刑事から連絡があった

事件の説明を受けてアリバイを問われたが
たまたま、梓が風邪をこじらせ救急で病院に
行っていた。結果、裏を取ったらしくアリバイが証明された

ならば
一体、誰が
何のために…


真山がいくら考えを巡らそうとも
答えに辿り着くことはなかった

真山はもう一度、珈琲を淹れ直すことにした











今のところまだ真山の妻である梓は
先程から何かを考えてはぼんやりしている
夫の姿をじっと見ていた

梓は何故、自分達は
こんな事になったのだろうか
何故、こんなにも苦しい思いをしなくては
いけないのだろうか

果たして
本当に真山への愛は
今も
残っているのだろうか
単なる執着に過ぎないのでは

と、梓は頭の中で思いを巡らせた
何もかも解放することで
全てが解決するのではないかと

自分自身も
真山も
かつての
プライドを
取り戻せるのではないかと

そんな事を考えながら
また、リビングのいつもの場所に座り
ただ、じっと
窓の外を眺めていた
梓の目には何故か
この窓に鉄格子がはまっているかの様に
見えていた





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