モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
***
震えがおさまらないーーー
美雨は病院に向かうタクシーの中で
そう、呟いた
「大丈夫?」
美登の問いかけにも上手く答えることが出来ない美雨はただ、首をコクりと縦に一回振るのがやっとだった
杜から思いもよらない口づけを受けた美雨は
正直、戸惑っていた
杜への気持ちに気付き、杜にもっと近づきたい、寄り添いたい
杜を暗闇から救ってやりたい
と、思う反面、自分にそれだけの価値があるのだろうか
杜にとって、それだけの存在に自分はなれるのだろうか、杜が愛して止まない存在を自分は越えれるのだろうか?
不安の方が遥かに大きく膨らんだ
杜の口づけが深くなればなるほど、その不安は拭いきれなかった
だから、杜が送ると言ってくれた事に対して、嬉しいと思いつつも、素直には受け入れられなかった
それで、頑なに断り一人で帰ったところ
こんな目にあうなんて…美雨自身、まだ気持ちの整理をつけられないでいた
「美雨ちゃん、警察の方…あの、岡崎さんて方が話を聞きたいって来てるけど…」
美雨が病院で手当て受け、 点滴を打って貰っていると美登が声をかけてきた
「辛いようだったら、明日でも構わないといってるんだけど、どうする?」
「はい…大丈夫です。こちらに入って貰ってください」
美雨がそう言うのを聞き耳を立てていたかの様に、刑事である岡崎は病室へと入ってきた
「案外、すぐ会えたよね」
岡崎は相変わらず刑事らしからぬ雰囲気で
そう言った
「僕は席を外した方がいいのかな?」
美登が言うと
「いえ、是非、いてください。むしろ、貴方に沢山聞きたいくらいです」
岡崎は一瞬、厳しい顔で言うと直ぐに
「貴重な目撃者ですからね」
いつもの、軽いトーンでそう言った
「それで、具体的な状況を…お辛いようでしたら…えっと…」
と、岡崎が言うと
「村嶋 美登です。現、美雨さんの雇い主でもあります」
美登が答えた
「では、整理させてください。美雨さんが、仕事を終えて帰宅しようとアパートの前まで来たとき不審者がいたと、っで羽交い締めにされ車で連れ去られそうになったときに、たまたま、近くを歩いていたあなたーーーえっとー」
「村嶋です」
「そうだった、村嶋さんね。その村嶋さんがいて、何とか美雨さんを助けれたと。たまたまね」
岡崎は一通りメモを取ると、
「今日はお疲れでしょうから、これにて失礼いたします。また、落ち着かれましたら、ご連絡いただけますか?」
そう言うと、岡崎は病室のドアへ手を伸ばした
と、同時に、
「ところで、たまたまっていうのはどれくらいの頻度の事を言うんでしょうね?」
岡崎の言葉に美登が答えた
「刑事さん、僕もしかして疑われてます?」
「いえいえ、刑事は全てを疑えと最初に教わるんですよ。僕もまだまだ、新米刑事なんですいません。悪気は無いんですけどね。いや、たまたまでも、本当に良かったなと。出なきゃ。美雨さんひどい目にあってますよ。あっ、充分ひどい目にあってますよね?どうも、余計な事を…とっとと、帰ります」
軽く片手を挙げると、岡崎は病室から出ていった
「美雨ちゃん、大丈夫?」
ため息混じりに美登がいうと
「はい、大した怪我もないですし…
その、すいません、巻き込んでしまって…」
「気にしないでよ。ほんと、偶然の事でさ。
ちょうど、近くで依頼人と打ち合わせしてたんだよ。ほら、例のずっと催促の電話を寄越してた人。あの人、あそこの先のオフィスに勤めてんだよ。っで、いつもの珈琲は旨いけど愛想のないマスターのいる喫茶店に行ってたわけだよ」
「そうだったんですか…」
「とにかくさ、これからのこと考えよ。僕もさ、これでも弁護士の端くれだし、先ずは体を休めてよ、ねっ?」
正直、美雨は疲れていた
色んな事がありすぎて、何も考えることが出来なかった
取り合えず、ベッドに横たわると目を閉じた
浮かんだのはやはり、杜の顔だった
震えがおさまらないーーー
美雨は病院に向かうタクシーの中で
そう、呟いた
「大丈夫?」
美登の問いかけにも上手く答えることが出来ない美雨はただ、首をコクりと縦に一回振るのがやっとだった
杜から思いもよらない口づけを受けた美雨は
正直、戸惑っていた
杜への気持ちに気付き、杜にもっと近づきたい、寄り添いたい
杜を暗闇から救ってやりたい
と、思う反面、自分にそれだけの価値があるのだろうか
杜にとって、それだけの存在に自分はなれるのだろうか、杜が愛して止まない存在を自分は越えれるのだろうか?
不安の方が遥かに大きく膨らんだ
杜の口づけが深くなればなるほど、その不安は拭いきれなかった
だから、杜が送ると言ってくれた事に対して、嬉しいと思いつつも、素直には受け入れられなかった
それで、頑なに断り一人で帰ったところ
こんな目にあうなんて…美雨自身、まだ気持ちの整理をつけられないでいた
「美雨ちゃん、警察の方…あの、岡崎さんて方が話を聞きたいって来てるけど…」
美雨が病院で手当て受け、 点滴を打って貰っていると美登が声をかけてきた
「辛いようだったら、明日でも構わないといってるんだけど、どうする?」
「はい…大丈夫です。こちらに入って貰ってください」
美雨がそう言うのを聞き耳を立てていたかの様に、刑事である岡崎は病室へと入ってきた
「案外、すぐ会えたよね」
岡崎は相変わらず刑事らしからぬ雰囲気で
そう言った
「僕は席を外した方がいいのかな?」
美登が言うと
「いえ、是非、いてください。むしろ、貴方に沢山聞きたいくらいです」
岡崎は一瞬、厳しい顔で言うと直ぐに
「貴重な目撃者ですからね」
いつもの、軽いトーンでそう言った
「それで、具体的な状況を…お辛いようでしたら…えっと…」
と、岡崎が言うと
「村嶋 美登です。現、美雨さんの雇い主でもあります」
美登が答えた
「では、整理させてください。美雨さんが、仕事を終えて帰宅しようとアパートの前まで来たとき不審者がいたと、っで羽交い締めにされ車で連れ去られそうになったときに、たまたま、近くを歩いていたあなたーーーえっとー」
「村嶋です」
「そうだった、村嶋さんね。その村嶋さんがいて、何とか美雨さんを助けれたと。たまたまね」
岡崎は一通りメモを取ると、
「今日はお疲れでしょうから、これにて失礼いたします。また、落ち着かれましたら、ご連絡いただけますか?」
そう言うと、岡崎は病室のドアへ手を伸ばした
と、同時に、
「ところで、たまたまっていうのはどれくらいの頻度の事を言うんでしょうね?」
岡崎の言葉に美登が答えた
「刑事さん、僕もしかして疑われてます?」
「いえいえ、刑事は全てを疑えと最初に教わるんですよ。僕もまだまだ、新米刑事なんですいません。悪気は無いんですけどね。いや、たまたまでも、本当に良かったなと。出なきゃ。美雨さんひどい目にあってますよ。あっ、充分ひどい目にあってますよね?どうも、余計な事を…とっとと、帰ります」
軽く片手を挙げると、岡崎は病室から出ていった
「美雨ちゃん、大丈夫?」
ため息混じりに美登がいうと
「はい、大した怪我もないですし…
その、すいません、巻き込んでしまって…」
「気にしないでよ。ほんと、偶然の事でさ。
ちょうど、近くで依頼人と打ち合わせしてたんだよ。ほら、例のずっと催促の電話を寄越してた人。あの人、あそこの先のオフィスに勤めてんだよ。っで、いつもの珈琲は旨いけど愛想のないマスターのいる喫茶店に行ってたわけだよ」
「そうだったんですか…」
「とにかくさ、これからのこと考えよ。僕もさ、これでも弁護士の端くれだし、先ずは体を休めてよ、ねっ?」
正直、美雨は疲れていた
色んな事がありすぎて、何も考えることが出来なかった
取り合えず、ベッドに横たわると目を閉じた
浮かんだのはやはり、杜の顔だった