モルフェウスの誘惑 ※SS追加しました。
***


美雨がぼぅーっとしているので
杜はまた顔に手を添えーーー


「今度こそ…目、閉じてーー」


そう言いながらまた、唇を重ねようとした







「う、ううんんんんーーーーーっ!」


わざとらしい咳払いと共に
美登がアトリエの入り口に立っていた











「っで、付き合うの?」

「お前に一々言う必要あんのかよ」

「杜さんも美登さんもいい加減にしませんか?」

先程からアトリエの隅の
テーブルセットに座り、
同じ会話を繰り返す二人

美雨が二人を注意しようとも
どちらも聞く耳をもたなかった

「僕には聞く権利がある!
僕は美雨ちゃんの雇い主だ
言わば、保護者同然だ
簡単にうちの従業員に手を出されては困る」

と、美登

「言ってる事がめちゃくちゃで
話になんねぇ
なんで、お前が美雨の保護者なんだよ
バカバカしい、ったく」

「おまっ、バカバカしいとはなんだよ
それが長年の親友に対しての言葉かよ
それにいつから美雨ちゃんの事
呼び捨てにしてんだよ
鷺沢さんと呼べ、馴れ馴れしい」

「はあ?
馴れ馴れしいはお前だろが?
初めっからちゃん付けで呼んでただろうが」

「ぃいい加減にしなさいっっ!」

一斉に黙り美雨の顔を見る二人







「えっと…その…
仲良くしませんか…みなさん…」

「あははー、美雨ちゃんの
怒った顔初めて見たけど
こりゃ、かわいいね
ちっとも怒られた気がしないな」

「おい、美登
止めろって。美雨をそんな風に見るな」

「はぁ…杜…。君ってやつはーーー
オッケイ、確認させてほしい」

「何だよ…」

「杜は美雨ちゃんの事が好きなんだな?
その気持ちに偽りはないんだよな?」

美雨は息苦しい思いで答えを待つ

「ああ、好きだな
ーーーーーーーたぶん」

「杜、そのたぶんってなんなんだよ
そんな中途半端な事では僕は納得出来ないよ」

「俺だって、気づいて間もないんだ
ーーーーこの気持ちに
長年の付き合いだろ?
察しろよ、ばぁか」

照れ隠しなのかそっぽを向いてしまう杜

美登は少しため息を吐くと

「解ったよ。あの杜がこれだけ素直に気持ちを話してくれてるんだから
僕はその気持ちを信じるよ
確かに、受け止めた」

美登はそう言うと、今度は美雨の方に向き直り
言った

「美雨ちゃんにも確認だけど
杜の事、ちゃんと考えているんだよね?」

美雨はしっかりとした眼差して
コクりと1つ頷いた

「よく、解った」

美登はそう言うと続けたーーー

「美雨ちゃんには
うちの事務所やめてもらうよ」

ーーーーーーー予想外の言葉だった





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