思春期の恋
「歩けんの?」
声変わりして、
いつ間にか低音の甘い声になっていた柊司の声が、
耳元すぐから聞こえた。
柊司の方を思わず向いてしまったら、
柊司もこっちを見た。
こんなに至近距離から柊司の顔を見たのは、
いつぶりだろう。
その頃とは全然違って、
丸顔でぷくぷくしていたほっぺは、
シュッと引き締まって、
クリクリの大きな垂れ目は、
はっきりとした綺麗な二重の瞳になっていた。
「歩け・・・ますが」
どうしゃべっていいのかわからず、
なぜか敬語になってしまった。
私は、片足びっこをひきながら、
柊司から離れた。
家まで、後もう少しだし。
地面に落ちた自分のリュックをつかもうと少し屈んだら、
ドテッ
また、尻もちをついてしまった。
柊司は自分の背中にあるバッグを前に回した。
そして、私に背を向けてしゃがんだ。