思春期の恋
教室の私の机のところまで、
柊司が支えてきてくれた。
「大丈夫か?」
私を椅子に座らせて、少しかがんで顔を覗き込んできた。
「うん。ありがとう」
「颯子?え?麻井くん?」
萌が、不思議そうに前の席から私と柊司を交互に見た。
「足、捻挫しちゃってさ。
柊司、家が近いから、一緒に教室まで支えてきてくれたんだ」
そう言って、足を伸ばした。
「うわっ。昨日休んだのってそのせい?
大変だったね」
萌はそう言って柊司をちらっと見た。
柊司は、バッグを肩に掛け直した。
「じゃあ、帰り迎えにくるから」
「麻井くんって優しいね!
家近いからって、帰りも送ってくれるなんて」
ニヤニヤしている萌の顔を、柊司が睨んだ。
「家が近いだけじゃないよ。
颯子は、俺の彼女だから。
じゃあ、また帰りな」
柊司はポケットに両手を突っ込んで、教室を出て行った。