日々

「話しかければ?」


「いや待て!話しかけて、
もし俺のこと忘れられてたら、
ショックじゃね!?」


いや、お前も忘れてるじゃん。
と笑う。
大輝は「寂しい!」と力説してくるけど、


理不尽だろ、お前…。



「大丈夫だと思うぜ。
俺も大輝のこと覚えてたし」


「いや、それはっ、
…お前が忘れてたら友達という
言葉の概念を真剣に考えるね」


「何故に概念(笑)」


「だって雅紀じゃん。あり得ねぇだろ」



タタッと歩き出した大輝の後を追う。



「もう同級生はいいのか?
久しぶりに会った俺に気づいたんだし、
大丈夫だって!」



フォローになってるか怪しいが、
素直に大輝なら大丈夫な気がするから
言葉に偽りはない。



「別に…。お前はすぐ分かる。
俺がお前のこと気づかない訳ないだろ」



人混みが多くなってきた。
屋台の灯籠が点く。



「…どんだけ一緒にいたと思ってんだよ」



追いかけていた背中から、
ポツリと声が漏れる。

思わず足を止めそうになって。

しかし歩く大輝のスピードが、
上がっていることに気づき、
また足を動かした。

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