ハニー・トラップ ~甘い恋をもう一度~
ホテルから遼さんに自宅兼店までは、車で走ればあっという間の距離で、この信号を曲がればもう到着だった。
ふぅ~と息をつき窓の外に目を向けると、前から仲の良さそうなカップルが歩いてくるのが見える。
「あれ? あそこにいるの雅哉と麻衣ちゃんだな」
遼さんもそのカップルに気づき、指さして私に教えてくれた。
雅哉くんの隣には、ショートボブのフワッとした髪型がよく似合っている可愛い女の子が寄り添っていた。
控えめに笑う女の子の横で、いつもと変わらず姿を振舞っている雅哉くんは、いつにも増して元気そうだ。
「お似合いのカップルだね」
「あぁ。俺たちも負けてられないな」
そう言うと車のクラクションを鳴らし、外の二人に私たちの所在を知らせると、握っている手を高々に上げ仲の良さをアピールしてみせた。
いい年して、何を張り合ってるんだか……
私たちに気づいた雅哉くんも、彼女と繋いでる手を上げ同じポーズをした。
それも遼さんと同じように、得意げな笑みをたたえて……。
似たもの同士と言ったところかと、思わず笑ってしまった。
車を店の裏の駐車場に停めていると、雅哉くんたちも裏口近くまで来ていた。
後部座席のパンの袋を取ると、遼さんがドアを開けて待っていてくれた。
「それ重いだろ。持つよ」
有無も言わさずヒョイっと袋を取り上げると、裏口へと向かってしまった。
その優しさに、胸がキュンと甘く疼いた。