雨、ときどきセンセイ。
チャイムが鳴り終わるのと同時に、どちらからともなく距離をとってゆっくりと離れた。
目はもう開けてるけど、センセイのネクタイからなかなか上に視線を移すことが出来ない。
恥ずかしいのと、信じられないのと、で……。
「あの……」
「ん?」
「どうして……」
『私を選んでくれたの』
嬉しい反面、具体的理由に見当もつかない私はそう尋ねたかったけど、最後まで聞けない。
だけど、やっぱりセンセイは私の思考を汲み取ったようで。
「時間が、動いたから」
その言葉に私は顔を上げる。
「吉井に前に言われた。『時間が止まってる』って。あれ、否定してたけど、思えばその通りなのかなと思った」
「あ……」
そんな生意気なこと言ったな……。
あの日の自分を思い返して、私は言葉を詰まらせる。
「あの教室(空間)での俺は、ずっと高校生のままだった。居ない筈の人を感じるために、あそこに居たんだ。……今、思えばな」
懐かしむように、そして、まるで懺悔かのように。
センセイは校舎を見上げて目を細めると続けた。
「その、18の俺の所に現れたのが」
「わ、私……?」
視線が私の方へと降りて来て、どぎまぎしながら自分に指をさして聞き返す。
それをみたセンセイは口角をあげる。
「もちろん、初めからってわけじゃない。けど、あまりに自然に俺の中に入ってきてはかき乱す」
「か、かき乱してなんか……!」
「それだけ、最初は“似てる”……そう思った」
今まで何度も言われてきた。
私はセンセイに似ている、って。
実際未だにそれが具体的にどういうところなのかはわからないんだけど。
でも前にみっちゃんが言っていた“不器用な性格”ってところはなんとなくわかったから、やっぱりそれなのかな、と思う。
「だけど、吉井は俺とは全然違った」
「え?」
手を口に添えて思い出し笑いをするセンセイを、私はぽかんと口を開けたまま見てた。