君と、世界の果てで
ここは、県内で一番規模が大きい水族館だ。
入場ゲートを通ると、すぐに巨大な水槽がある。
土曜日だからか、親子連れやカップルで、賑わっている。
それでも、全体的に静かで青い空間は、意外と心地よかった。
何の曲も流れていない。
聞こえるのは、イルカや海獣の鳴き声や。
走り回る子供達の笑い声だけだった。
正面の大水槽には、イルカが二匹、悠々と泳いでいる。
「これ、こいつらだけで広そうだな」
「海よりは、狭いでしょうけどね。
元々、彼らの為の水槽じゃなかったから」
「そうなのか?」
「元々は、シャチがいたんです。知りませんか?」
……はぁ、そう言われれば。
入口にデカデカと飾られた看板も。
館内案内のパンフレットにも。
イルカとは違う、白黒ボディの、太った生き物のイラストが描かれている。