君と、世界の果てで
「元々、ここの一番の目玉は、シャチだったんです。
ここで、狭そうに泳いでました。
芸も、練習中で。
イルカショーに、ちらっと出たりしてました」
「芸なんかできるのか?相当デカイだろ」
「ジャンプしてましたよ。
イルカほど、軽やかじゃなかったけど」
へぇ、と、目の前のイルカを見た。
普通のイルカより白いイルカ。
全く詳しくない俺に、これはスナメリという名前です、と深音が教えてくれた。
「水族館、好きなのか?」
「はい」
「そうか。で、そのシャチは……どこに移動したんだ」
「最近、死んじゃいました」
「えっ」
よく見ると、水槽のすみに、
『ありがとう、コウちゃん』
という文字と共に、シャチの写真が貼ってあった。
略歴の一番下の行には。
『12月29日 永眠』
と書かれていた。
そうか。本当に、つい最近だ。
それで、看板やパンフレットが間に合ってないのか。