君と、世界の果てで
彼女の体は一瞬震えたが、すぐに観念したように、力が抜ける。
長い口づけから開放してやると、彼女の唇が、どちらのものともわからぬ唾液で、妖しく光った。
「……好きだ」
自分でも意外なほど、するりと出た言葉は、深音の唇に落ちた。
彼女の大きな瞳は、みるみる涙を溢れさせる。
「だから、死ぬなよ。
俺が……守るから」
真珠のような涙が、ボロボロと彼女の頬をつたって、その豊かな胸に落ちた。
必死にうなずく彼女を、また、抱きしめる。
彼女は、陸のものではなかった。
その事実が、俺に勇気を与えた気がした。
……ずっと、逃げていた。
俺だって、もう、とっくに。
きっと、初めて君を見つけた日から。
好きだったのに。
バンドを言い訳にして。
逃げていた。
一度走り出したら、止められないのがわかっていたから。