君と、世界の果てで


「ツバサさん」


「あ?俺?」



名前を呼ばれ返事をすると、女の子はコクコクとうなずいた。



「あの……あっちに、ツバサさんのファンが待ってるんですけど」


「は?」


「すごく人見知りな子で。

すみませんが、少し付き合っていただけませんか」



深音には全くかなわないが、背が小さい可愛い女の子は、恥ずかしそうに言った。



「いや……ちょっとそれは……」


「行ってあげたら?深音が解放されたら呼ぶから」



崇文が、ファンは大事にしてほしいと言うように、俺を見つめる。



「……しょうがねぇな……どこだよ」


「こっちです」



めんどくせぇなぁ。


また営業スマイルしなきゃなんねぇのか。


ベース弾いてりゃ良いだけの身分になりてぇなぁ。


不満たらたらで、女の子の後をついていく。


だんだんと深音の姿が、小さくなる。


裏口から道を一本渡り、向かいのビルの駐車場まで連れて行かれた。

< 270 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop