君と、世界の果てで
彼の華奢な体が、あたしを抱きしめ返した。
それは、抱きしめると言うよりは。
すがるようだった。
「……深音が兄貴の彼女なら良かったのに」
「……何で……?」
「だって深音なら、兄貴を音楽に連れ戻してくれるだろ?
俺は、兄貴がベース弾いてくれてりゃ、それで良いんだよ」
「……わかった、誘惑する。
もう一回会わせて」
「だから、処女のくせに無理すんな」
「処女って連呼しないで!」
「そんな事に、お前を利用できないよ。
俺は紗江ちゃんほどクールじゃないから」
「……」
「深音は、本当に好きな人と幸せになってよ……」
最後は、涙声だった。
あたしは、自分を恨んだ。
陸を、男として見れない自分を。
そうできたら。
陸の苦しみを、もっとわかってあげられる気がするのに。