黒姫

はい、と渡された恐らく醤油の値段キッカリの小銭に苦笑する。


「いいって。醤油なんてみんな使うんだから」
「……御駄賃?」
「あれ可笑しいな、私里沙のお姉ちゃん何だけど」


この歳で、しかも妹から醤油買いに行く御駄賃を貰う程お金に困っちゃいない。
しかし里沙は引かなかった。


「那央から、また貰うから」
「……そう?」


なら瑞姫が貰えば良いのでは、と思ったが、意外と押しの強い妹から小銭を受け取る。


「瑞姫。これ」
「里沙……最初から何が何でも買わせる気だったよね」
「うん」


差し出されたのは居間にほっぽり出したままだった財布の入った鞄。
瑞姫は用意の良さに再び苦笑して、コートを羽織ると「行ってきます」と階下に降りた。

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