クリスマスの夢 ~絡む指 強引な誘い 背には壁 番外編~
その意味
♦
「にしてもさっ……」
言い終わる前に巽の唇が落ちてくる。
右手は素早く背中のファスナーを下げ、更に左手を使って脱がしにかかる。
まだセミスゥイートの部屋に入ったばかり。靴も脱いでいない。
「ちょっ……」
舌が抜かれた合間を見計らって抗議をする。
「随分お気にいりだな」
言いながら、部屋の中央に位置しているベッドへドスンと落とす。
「えっ……私が?」
「他に誰が?」
何のことだかさっぱり分からないが、とにかく巽は下着を取る手をやめない。
「えっ、待ってよ。どうしたの!?」
香月は巽の肩を掴んで、抵抗する。
「揃いの時計をつけたところで、四対の態度が変わらんのが気に食わん」
「…………」
はぁ?
「あのさ、その前に」
香月は上から乗りかかってくる巽を手でどかせようとした。が、びくともしない。
「……あのさ」
諦めて、その体制のまま話を続ける。
「さっきの、何の食事会だったの?」
「何の、とは?」
逆に巽は聞いてくる。
「え、だから。誰が言いだしっぺなの?」
「雰囲気的には、烏丸だろうな」
「四対さん目当てだよね……」
「それを感じて……というより、アイツはいつも通りだったな」
「いや、感じて、だよ。完全に烏丸さんから逃げてる感じだった。でも気を遣ってたよ、やっぱり。相手が一般人だったら
『ブスは嫌いだって言ってんだろーが』
の一言で終わるね」
「お前以外の女ならか?」
「私、そこまで自意識過剰なつもりないですけど」
巽はいつも通りのポーカーフェイスで全く読めない、が、いつもより不機嫌なことは分かる。
「烏丸さんが四対さんのことが好きで、取り入ろうとしたけど、失敗したって感じ?」
「失敗したかどうかはまだ分からんだろう?」
「あれは失敗だよ。四対さん、全然眼中になかったじゃん」
そこで巽は香月の視界から外れ、ごろんと隣で仰向けになる。
「でさ、なんで四対さんは私たち呼んだの?」
「……烏丸とのパイプをつくらせてやったつもりなんだろう。四対は誘えばお前が来ることを確信してた、ということだ」
「まあね、友達だから」
さらりと言ってのけるのが一番いい。
「友達、といつまで言うつもりかな……」
巽はじろり、とこちらを睨む。
「えっ、友達はと友達じゃん。あなたも友達でしょ? クリスマスの約束も一応4人でって自分からしてたじゃん」
「お前たち2人きりにするよりはマシだろうが」
「……どしたの? 随分突っかかるね」
香月は巽をじっと見つめた。
相手はこちらをちら、と見ただけで天井を向く。
「木曜、ランチでも行くか……」
「えっ、どうしたの?」
香月は笑いながら、巽に乗りかかった。
「行くけど、どうしたの?」
「いいや、どうも」
巽は射抜くほど目を見つめてくる。
「それとも、漫画喫茶か……」
香月は大笑いして、巽の胸に頬をあてた。ワイシャツの感触が心地いい。
「どうしたの? なんでそんなに四対さんに絡むの? 今までも私と四対さんはずっとそうだったじゃない」
「……何度も同じことを言わせるな」
あぁ、揃いの時計したのにってくだりか……。
「けどさ、あなたは今まで四対さんのことは信頼してるって言ってたじゃない」
「信頼はしている。寝取るようなマネもせんのは分かっている。
俺はどちらかというと、四対の態度よりはお前の態度が気に食わん」
「へっ、私!?」
まさか責められていると思わなかった香月は、目を大きくさせて、巽を見つめた。
「えーっと、私……何かしたっけ?」
正直に思ったままを言う。
「…………」
巽は黙ってベッドから起き上がり、サイドテーブルに置いてあったタバコに火をつけた。
「……ねえね、クリスマス、4人で一緒に行くの?」
の問いに巽は何も答えない。
「どうせオーストラリアとかは無理だよね。忙しい人ばっかりだし。けど、クルーザーでディナーならできそうかな……。私、したことないし、してみたい。あなたが行くなら、行きたい。行かないのなら、行かない」
「俺はまだ仕事の予定が分からん。
四対に誘われたら、お前だけでも行け」
「何よそれ、思ってもみないこと……」
「烏丸と四対が円滑な関係になれば、真籐氏が喜ぶ。お前の株が上がるぞ」
「そんな……」
まさか、自分では考えもつかないような巽の推理に脱帽した。
「そんなことまで……」
「大事なことだ」
巽は言い切るが、そこまでして副社長に取り入ることもない。
「別に……」
「店舗に戻りたいんだろう? なら、その2人の仲を取り持って、副社長に交換条件を出せばいい」
「無理」
香月は即答した。
「だろうな」
巽も提案してみただけのようだ。
「だが、そうゆうふうに物事を動かしていく力をつけることも重要だ。いつまでも、店に戻りたい戻りたいと嘆いているばかりでは始まらんぞ」
「…………。別に、今は……。もう店に戻っても、佐伯も西野さんも、誰もいないような所なら……」
「お前は自分自身のことも知らないのか」
巽に叱られたような気持ちになり、俯く。
「前みたいに、店で売り上げを追いたいんだろうが。その方がやりがいを感じるんだろ?」
「……分かんない」
香月は体育座りをして、完全に頭を伏せた。
「……とにかく、今の会社でいたいのなら、もう少しやりがいを探せ。
だらだらしていると、人生、無駄にするぞ」
「にしてもさっ……」
言い終わる前に巽の唇が落ちてくる。
右手は素早く背中のファスナーを下げ、更に左手を使って脱がしにかかる。
まだセミスゥイートの部屋に入ったばかり。靴も脱いでいない。
「ちょっ……」
舌が抜かれた合間を見計らって抗議をする。
「随分お気にいりだな」
言いながら、部屋の中央に位置しているベッドへドスンと落とす。
「えっ……私が?」
「他に誰が?」
何のことだかさっぱり分からないが、とにかく巽は下着を取る手をやめない。
「えっ、待ってよ。どうしたの!?」
香月は巽の肩を掴んで、抵抗する。
「揃いの時計をつけたところで、四対の態度が変わらんのが気に食わん」
「…………」
はぁ?
「あのさ、その前に」
香月は上から乗りかかってくる巽を手でどかせようとした。が、びくともしない。
「……あのさ」
諦めて、その体制のまま話を続ける。
「さっきの、何の食事会だったの?」
「何の、とは?」
逆に巽は聞いてくる。
「え、だから。誰が言いだしっぺなの?」
「雰囲気的には、烏丸だろうな」
「四対さん目当てだよね……」
「それを感じて……というより、アイツはいつも通りだったな」
「いや、感じて、だよ。完全に烏丸さんから逃げてる感じだった。でも気を遣ってたよ、やっぱり。相手が一般人だったら
『ブスは嫌いだって言ってんだろーが』
の一言で終わるね」
「お前以外の女ならか?」
「私、そこまで自意識過剰なつもりないですけど」
巽はいつも通りのポーカーフェイスで全く読めない、が、いつもより不機嫌なことは分かる。
「烏丸さんが四対さんのことが好きで、取り入ろうとしたけど、失敗したって感じ?」
「失敗したかどうかはまだ分からんだろう?」
「あれは失敗だよ。四対さん、全然眼中になかったじゃん」
そこで巽は香月の視界から外れ、ごろんと隣で仰向けになる。
「でさ、なんで四対さんは私たち呼んだの?」
「……烏丸とのパイプをつくらせてやったつもりなんだろう。四対は誘えばお前が来ることを確信してた、ということだ」
「まあね、友達だから」
さらりと言ってのけるのが一番いい。
「友達、といつまで言うつもりかな……」
巽はじろり、とこちらを睨む。
「えっ、友達はと友達じゃん。あなたも友達でしょ? クリスマスの約束も一応4人でって自分からしてたじゃん」
「お前たち2人きりにするよりはマシだろうが」
「……どしたの? 随分突っかかるね」
香月は巽をじっと見つめた。
相手はこちらをちら、と見ただけで天井を向く。
「木曜、ランチでも行くか……」
「えっ、どうしたの?」
香月は笑いながら、巽に乗りかかった。
「行くけど、どうしたの?」
「いいや、どうも」
巽は射抜くほど目を見つめてくる。
「それとも、漫画喫茶か……」
香月は大笑いして、巽の胸に頬をあてた。ワイシャツの感触が心地いい。
「どうしたの? なんでそんなに四対さんに絡むの? 今までも私と四対さんはずっとそうだったじゃない」
「……何度も同じことを言わせるな」
あぁ、揃いの時計したのにってくだりか……。
「けどさ、あなたは今まで四対さんのことは信頼してるって言ってたじゃない」
「信頼はしている。寝取るようなマネもせんのは分かっている。
俺はどちらかというと、四対の態度よりはお前の態度が気に食わん」
「へっ、私!?」
まさか責められていると思わなかった香月は、目を大きくさせて、巽を見つめた。
「えーっと、私……何かしたっけ?」
正直に思ったままを言う。
「…………」
巽は黙ってベッドから起き上がり、サイドテーブルに置いてあったタバコに火をつけた。
「……ねえね、クリスマス、4人で一緒に行くの?」
の問いに巽は何も答えない。
「どうせオーストラリアとかは無理だよね。忙しい人ばっかりだし。けど、クルーザーでディナーならできそうかな……。私、したことないし、してみたい。あなたが行くなら、行きたい。行かないのなら、行かない」
「俺はまだ仕事の予定が分からん。
四対に誘われたら、お前だけでも行け」
「何よそれ、思ってもみないこと……」
「烏丸と四対が円滑な関係になれば、真籐氏が喜ぶ。お前の株が上がるぞ」
「そんな……」
まさか、自分では考えもつかないような巽の推理に脱帽した。
「そんなことまで……」
「大事なことだ」
巽は言い切るが、そこまでして副社長に取り入ることもない。
「別に……」
「店舗に戻りたいんだろう? なら、その2人の仲を取り持って、副社長に交換条件を出せばいい」
「無理」
香月は即答した。
「だろうな」
巽も提案してみただけのようだ。
「だが、そうゆうふうに物事を動かしていく力をつけることも重要だ。いつまでも、店に戻りたい戻りたいと嘆いているばかりでは始まらんぞ」
「…………。別に、今は……。もう店に戻っても、佐伯も西野さんも、誰もいないような所なら……」
「お前は自分自身のことも知らないのか」
巽に叱られたような気持ちになり、俯く。
「前みたいに、店で売り上げを追いたいんだろうが。その方がやりがいを感じるんだろ?」
「……分かんない」
香月は体育座りをして、完全に頭を伏せた。
「……とにかく、今の会社でいたいのなら、もう少しやりがいを探せ。
だらだらしていると、人生、無駄にするぞ」