二手合わせ



恐怖で目をギュッと瞑る。
視界は全く変わらなかった。


永倉さんが歩くたびに伝わる振動で、落ちやしないかと不安になる。


だけど、
永倉さんから移る体温と、一定のリズムで聴こえる鼓動には……安心、しなかったこともない。

恐怖の方が勝ったけど。


少しの間歩くと(永倉さんがだけど)、ふ、副長?の部屋の前に着いたらしく

意外にも優しく下ろされた。


…覚えてる凶悪そうな顔からして、ペイッと放り出されそうなイメージだったんだけど。

案外…優しかったり?

いや!
それならあんな刀で脅したりしないよね、うん。

一人で納得していると
これまた優しく手を繋がれ、部屋の中へと導かれた。


「副長。大変だ」

「なんだ。手を繋いで、仲良しだな。…おい、まさかデキたとかやめろよ」

「副長」


永倉さんが咎めるような声を出す。


「わりぃ、ふざけた。で?どうした新八」

「…コイツ、目が見えてない」


繋いでいた手を離され、少し背中を押されて前に出る。

すると、一拍空けて、副長が溢したのは


「…………あ?」


という言葉?だけだった。



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