二手合わせ



尤も、私が見えてないだけで、頷いたりとかしていたのかもしれないけど。


カラッと障子を開ける音と、遠ざかる足音からして、永倉さんは『山崎さん』とやらを捜しに行ったのだろう。



……ん?

え、まさか、
私…副長さんと二人きり……ですか。


気まずっ!!


まだ副長さんに見られているのだろうか。

それとも、もう私に背中を向けて仕事をしているのだろうか。


分かんない…それがまた気まずい。


何分間か沈黙が続いたが、口火を切ったのは副長さんだった。


「見えなくなった、心当たりとかはねぇのか?」

「え?」

「何か目に入っちまった、とか、何か拾って食っちまった、とか。元々、見えなくなっていく症状があった、とか」

「…いえ、全く」


寝て、朝起きたら真っ暗だった。

月明かりのような
微かな光もない
ただただ漆黒の世界の朝だった。



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