二手合わせ



朝なのか、夜なのか分からなかった。

方向が分からなかった。
どこに何があるのかも分からなかった。

手を引かれて歩くのさえ、怖かった。



私はギュッと拳を作った。
爪が掌に食い込んで痛い。
それが、この状況が現実だと訴える。


「…手に傷がつくだろーが。とりあえず、座れ」


副長さんに促されて座ろうと思ったけど、躊躇する。

……私の周りって、何も無いんだろうか。

座ったときに、書類とかをお尻に敷いてしまったらどうしよう。


悶々と考え込んでいると


「お前の周りにゃ何もねぇよ。さっさと座れ」


と、再び催促された。

ホッとして、ゆっくりと座る。


目を閉じる。

サラサラと音がするのは、副長さんが筆で何かを書いている音だろうか。

煙の香り…たぶんキセルだろう。


……視界がなくなって、私はこれからやっていけるのだろうか。




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