たぶん恋、きっと愛
一度、行ったことがあるだけの水族館だったけれど。
迷うことなく入り口にまで、たどり着いた。
ここまで来ると、一人で居るのはなんとなく場違いな気がしてくるほどに、カップルやグループばかりだ。
バッグの持ち手につけた時計は、テリア犬を型どった金色のキーホルダー。
時間は、単純計算で見ても、みんなが水族館に入ってから40分は経っただろう。
雅は紺色のフレアスカートが、海風ではためくのを押さえ、チケット売り場に並んだ。
「雅!チケットあるよ!」
どこにいたのか、建物の左側から、見知った顔が、呼んだ。
「あ、柳井先輩」
「買ってあるから!」
にこにこと手を振るのは、先日のライブの打ち上げ前に、はからずも凱司に威圧されてしまった、“センパイ”。
「ありがとうございます、遅くなってごめんなさい」
列から外れ、とりあえず謝った雅が、首を傾げて顔を見上げた。
「ずっとここで待っててくれたんですか?」
この水族館は、一度外に出たら再入場は出来なかったはずだ。
チケットを二枚持っている彼は、中に入らなかったのだろうか?