たぶん恋、きっと愛
「ついておいで。…雅ちゃん、ほらしっかりしなって。俺がいるだろ?」
「…好きになんかなったら駄目だもの…ねぇ、鷹野さん…、そんなんじゃない、ですよね?」
すがるように見上げてきた雅の頭を抱き寄せて。
鷹野はそのまま、ぽんぽん、と頭を撫でる。
「大丈夫」
はしゃぎながらも、真剣な目で見ていた田鹿は、首を傾げた。
田鹿の中で、“やたら綺麗なギタリストに憧れる雅の図”が崩れた。
“派手なドラマーに憧れる雅の図”も崩れた。
「…もしかして、逆…なんですか?」
呟いた田鹿に、鷹野は振り返って。
馬鹿にしたかのようにニヤリと。
唇の端を、僅かに上げた。
「田鹿…あんた、私で良かった…とか思ってんでしょ」
「加~奈子ぉ~…俺怖いっ」
身震いするような仕草は、おどけてはいるが、半ば本気。
あれは。
あの目は。
怖い。
「あんな人が…あんなふうに付いてたんじゃ…」
ちらりと見る先には、何か言いたげな柳井と、多少の苛立ちを浮かべた目でそれを無視する凱司が、いる。
「柳井先輩、どうする気なのかなあ…」
諦めなかったのは、雅に付き合っている男はいないと聞いたから。
あの金髪の派手な刺青のドラマーは彼氏ではなく、ただの“世話になった人”だと、言われたから。
だけど、今、先輩はどうする気でいるんだろう。
今、雅を支えている鷹野にすら、呑まれた気がするのに。