たぶん恋、きっと愛
血の気が引くほどの怒りは、同じく血の気の引いた雅のしゃくりあげる声で、波が引くように収まって行った。
左の手首をひねったかも知れない。
鈍い痛みは、少しの刺激で激しく痛む。
爪といい、手首といい、なんとも脆弱な事だ。
英語教師が、自分のハンカチで、柳井の顔を覆った。
床にボタボタと落ちた血は、たいした事はない。
大半が、柳井のシャツに染み込んでいるから。
「………雅さん」
落ち着いた声に、雅の肩がぴくりと動き、おそるおそる体を離す。
せっかく付けていた口紅は、名残程度にしか残っていない。
友典は、親指の腹で、その唇をぬぐう。
執拗に何度も擦るのを、雅はおとなしく、そうされていた。
「鼻血、止まらないな…柳井、保健室行くぞ。宇田川と須藤雅もだ」
「…駄目だ」
雅の唇をひたすら擦りながら、友典は呟く。
「…彼女の髪が、乱れてる」
まるで正当な理由を述べているかのような物言いに、英語教師は。
なら俺が戻るまでここにいろ、と、柳井を、立たせた。