たぶん恋、きっと愛


「…遅く、なってすみません」


今更、拳に血が付いているのを拭い、友典は気まずそうに雅の足から目を逸らした。


怖かった、と口にするのが、ひどく珍しい気がする。

大丈夫、は聞き慣れている。
だが、怖かった、は、初めて聞く本音のような気が、した。



「あ…ごめんなさい…」


慌てて友典の上から退いた雅は、そっと自分の髪に触れ、悲しそうに、リボンを解いた。

指を少しずつ通してほどいて行けば、細かく編まれた髪はすっかり癖がつき、ふわふわと、顔の周りを縁取った。



「…本当に、怪我はありませんか?」


友典は、左右共に髪をとき、無造作にひとつに結んだ雅を、探るように見つめた。



「ない、です。友典さんこそ、大丈夫ですか?」


鍵を開ける音が聞こえ、雅の担任と、英語教師とが、難しい顔で現れた。
 


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