たぶん恋、きっと愛


「鷹野さんは…何か食べましたか?」


頬に滑る凱司の指が、耳をかする。

くすぐったそうに、わずかに肩をすくめた雅が、小さく訊いた。


ふと動きを止めた凱司の指が、一度強く頬を擦ると、突き放すように、ぐい、と頭を押し戻した。



「一旦、熱が引かない事には食えないだろうな」


何もなかったかのように足を踏み出し、洗面所に続く引き戸を開けた凱司の後ろを、雅はやはり何もなかったかのようについて歩く。



「……いつ熱下がります?」

「6時間…7時間くらいはかかんだろ」


ざぶざぶと、手を洗う。

透明感のある琥珀色の石鹸は、雅が選んで買ってくる。

まるくなだらかな形と、わずかに香るジャスミンの香りが好きだと言って。




「………凱司さん…」

「…………」


鏡越しに凱司を覗き込む雅を、しつこい、とばかりに睨みつけ凱司は。

伝染んねぇよ、お前も手ぇ洗っとけ、と振り向かないままに雅の手を掴み、流れる水に突っ込んだ。
 


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