たぶん恋、きっと愛
「まだ口きかねぇのか」
めんどくせぇ奴だな。
と、呟いた凱司に。
友典と会話の出来ない現状が、凱司の指示ではないと、初めて知った。
ようやく手を離し、閉じこめるような体勢から身を起こした凱司が、水道を止める。
ふと、ほっとしたように肩の力を抜いた雅に、かちんと来たのか、凱司はぴくり、と。
眉を跳ね上げた。
「…で?」
手を拭く雅の体を、くるりと反転させた凱司は、そのまま軽々と雅を持ち上げ、声を出す間もなく洗面台の淵に座らせた。
「………で、って…?」
明らかに目を逸らす雅の背後の鏡に、左手をついた。
雅は洗面台の中に落ちないように、体を強ばらせながらも、わずかに仰け反る。
「鷹野は、挿れようとしないのかって訊いたろ?」
雅のスカートから伸びる腿に、手のひらを置けば、過剰に緊張した雅の目許に、過剰なほどの“色”が、滲んだ。
「…い……れ…ません!」
「本当に?」
「…………え?」
腿に置かれた凱司の指先が、わずかに上に這う。
「…本当、です。だってあたしは…凱司さんの、ですもの…」
不安げに凱司の目を覗き込んだ雅が、上目遣いに眉を下げた。
黙ったままの凱司の灰青の目が、雅の思考を止めさせる。