たぶん恋、きっと愛
「…宇田川、ドア、開けてやってくれるか?」
何を混乱したのか、鷹野からの着信を告げる携帯を耳に当てた宇田川の、その手から携帯を抜き取って、凱司は呆れたように言った。
視線の先では、同じように携帯を耳に当てたまま固まる鷹野がいて。
仕方なく凱司も、抜き取ったそれを、耳にあてた。
「……ちゃんと、連れて帰って来い。10分以内だ」
ここは寒すぎる。
濃い紅茶を、淹れておくから。
電話で話すには、近すぎる。
けれど、手を伸ばすには少し遠すぎて。
ましてや、車の中に閉じこもった雅を、無理に引っ張り出すなんて出来ない、距離。
宇田川の手の中の丸いボタンを押せば、ガチャリと鍵の解除される音が、響いた。
背を向けた雅が飛び起き、再びロックを掛けようと手を伸ばすよりも早く。
鷹野の、こちらを向いていた視線は雅に戻り、先を争うように開け放ったそのドアから。
体を、押し込んだ。
「……あいつは強盗か」
「運転席側も後ろも…開いてたでしょうにねぇ…」
凱司は、ころころと笑う由紀を見下ろすと、小さく息を吐き、エスコートするかのように、由紀の背をやんわりと、押した。