たぶん恋、きっと愛


完全に逃げ場を失わせたばかりでなく。

まさに体の重なるような姿勢に、どきりとしたのは、鷹野の方だった。



「たっ…鷹野さん…痛っ…」

「ごめ……ちょっ…待って」



天井に、頭がつく。
鷹野の髪が、雅の視界を覆った。


ごそごそとシートの横に腕を伸ばした鷹野は、背もたれを倒し、ようやく息をつくが、はたと 動きを止めた。

腕の間で、おとなしく仰向けに倒れた、雅が。

短い髪を散らして、堪える気もないかのように涙をこぼすのを、間近で見てしまった。



「雅ちゃ……」


ずくり、と。

体の中心に、杭が。

氷で出来たような、焼けた鉄で出来たような杭、が。




「…鷹野さん…鷹野、さん…」


もう…やだ。
もう、無視しないで。

あたし、怖かった。
怖かった。

鷹野さんいないの、怖かった。



たがが外れたかのように、繰り返す雅の声に。

この杭は、抜ける事はないだろう、と。



ひどく痛むような感覚に。
そう、感じた。
 


< 834 / 843 >

この作品をシェア

pagetop