In the warm rain【Brack☆Jack３】

「…でも、良かったわ、急所が外れていて」

「わざとだよ」


　レンは天井を見つめたまま言った。

　ユイは不思議そうにレンを見つめ返す。


「俺達が組織の一員として働き始めた頃、一緒に仕事をした女がいた…その女の名前はシャン、組織の中でも優秀なスナイパーだった」

「………」

「そんな女がミスをするなんざ考えられねェ。だから急所が外れてたんじゃなくて、わざと外してくれたと考える方が、筋が通ってる」


　レンの言葉を聞きながら、ユイは得体の知れない不安がどんどん大きくなるのを感じずにはいられなかった。

　今回の敵がウー・イー・シーだということを頭の中では理解していたが、心のどこかでそれを否定したいと思っていた。

　だが時間が経つにつれて、その事実が現実味を帯びてくる。


「でも、どうして…」


　どうしてシャンという女は、レンを仕留めることが出来なかったのか。