In the warm rain【Brack☆Jack3】
 今頃そんな話を持ち出されても、こっちにはまるで関係のないことなのに。

 この組織に拾われた、ということは、それなりに能力を持った人間であるはずなのに。

 この男…やけに動きが遅い。


「もうすぐここは爆発するわ。そこをどいてもらえないかしら?」


 試しに言ってみる。

 だが男はニヤニヤ笑うだけで、動こうとはしなかった。

 ――…やはり。

 この男は、自分をここに閉じ込めようとしている。


「無駄ね、そんなことをしても」


 言いながら、ユイはナイフを男に向かって投げた。

 狙いたがわずに、ナイフは男の胸に突き刺さる。

 だが、それでも男は動かなかった。


「………」


 ユイは一瞬、戦慄を覚えた。
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