In the warm rain【Brack☆Jack3】
「……!!」


 ユイは咄嗟に、男の陰に身を隠す。

 その瞬間、爆発が起きた。

 同時に大量の海水が流れ込んで来る。

 ユイはハッチに手を伸ばした。

 だが、びくともしない。


「内側から開かない構造なのね」


 ユイはそう呟くと、壁に寄りかかった。

 水はあっという間に、膝の高さに達している。

 男は既に、事切れていた。


「困ったわね…」


 声に出して言ってみる。

 と、笑いが込み上げてきた。

 遠くで聞こえる、叫び声。

 どうやら、自分の名前を必死で呼んでいるらしい。


『ユイー! ユイ!! いるのか? いたら返事しろ!!』


 ユイは、ハッチを軽く叩く。

 物凄い勢いで、ハッチは外側から開けられた。


「…らしくねェミスだな、ユイ」

「ていうか、少し恥ずかしいわ、レン」


 差し出されたレンの手を握り、ユイは笑いながら言った。
< 207 / 221 >

この作品をシェア

pagetop