In the warm rain【Brack☆Jack3】
「ジジイは何もかも終わりにしたかった。だから、その意志に反して組織を存続させているのは間違ってる」

「違う。老師はこの組織を愛していた」

「そうだよ」


 銃を持つ手はそのままで、ミサトはシュキの言葉を肯定した。


「愛してるからこそ、無くしたかった」


 ――…空気が、揺れた。

 ここにいる全員に、ミサトの言葉で微かに動揺が走る。

 その時、船が大きく傾いた。

 思わず身体がよろけて、一瞬視線がシュキから外れた。

 まずい、と思った瞬間、辺りに発砲音が響く。


「どうやら、間に合ったようだな」


 聞き慣れた声。

 微かに香るいつものタバコの香り。

 ミサトは、くすっと笑って自分の身体を抱き上げているその顔を見上げた。
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