In the warm rain【Brack☆Jack3】
「……!」


 船が殆ど垂直に近い状態まで傾いた。


「まずいな」


 甲板の手摺りに掴まりながら、レンは呟く。

 そして、ちらりとエイジに視線を送る。

 その視線の意味を読んだエイジは、軽く頷いた。


「迎えの船が来るまで、この船はもたねェな」


 そう言って、エイジはミサトの身体を抱き抱えた。

 レンも同じように、ユイを抱き上げる。


「………え?」


 いきなり何をするのか聞く暇もなく。

 気が付いたらミサトの身体は、海に向かって思い切り投げ飛ばされていた。


「レン! エイジ!!」


 軍艦からかなり離れた場所に着水し、ミサトは声の限り叫ぶ。


「まさか…!」


 ミサトの近くにいたユイも、呆然と軍艦を見つめた。

 二人が見つめる目の前で、軍艦はすざまじい轟音と水しぶきを上げながら、瞬く間に海中にその姿を消した――。
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