涙と、残り香を抱きしめて…【完】

「…本気…なの?」

「本気だ。妻と別れて、星良と結婚する」


ここまで明日香に言い切ったのは、自分に言い聞かせる為でもあった。


有言実行…


「専務の気持ちは分かった。
でも…星良ちゃんは成宮部長と付き合ってるのよ。

こんな事言うのは申し訳ないけど、星良ちゃんの気持ちはどうなんだろう?
今更…って言われるんじゃないかな…?」

「確かに…その可能性はある。
でもな、アイツは今でも俺を想ってくれてる。
俺はそう信じてる」

「おやおや、かなりの自信ね」


呆れ顔で笑う明日香。だが、急に真顔になったと思ったら「なんなら、私が星良ちゃんに話してあげようか?」なんて言ってくる。


「よせよ。ガキじゃあるまいし…
自分の気持ちくらいちゃんと自分で伝えられる。
心配は無用だ」

「なら…いいけど」


そうだ…今まで必死で抑えてきたこの気持ちを…
やっと、星良に伝えられるんだ。


言いたくても、決して口に出来なかった言葉。


"愛してる…"という言葉を…




パスタ専門店を出る時、明日香が言っていた。
星良は午後から毎日、あのフィットネスクラブに通って筋トレしてると…


「行ってみるか…」


切りのいい所で仕事を終わらせると、俺は急いで会社の地下駐車場に行きフィットネスクラブに向かった。


渋滞にイライラ…赤信号がまどろっこしい。
強引に車線変更しながらアクセルを踏み込む。


フィットネスクラブに到着したのは4時。


大きく深呼吸をして中に入ると、一気に階段を駆け上がり星良を探す。


すると、ランニングマシンで黙々と走っている見覚えのある後姿が眼に止まった。


焦る気持ちを抑え、その後ろ姿に近づき声を掛ける。


「星良…」



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