涙と、残り香を抱きしめて…【完】
「んっ…蒼…君?」
眼を覚ました安奈が顔を上げ、トロンとした眼で俺を見る。
「どう?もう平気?」
「あぁ、随分、楽になったよ…安奈のお陰だ。
ありがとな」
「そう…良かった」
そう言って笑った安奈だったが、どうも様子がおかしい。
頭を撫でていた手を頬に移動させると…
異常に熱い。
「安奈ちゃん…もしかして、俺の風邪がうつったのか?」
「う…ん。そうかも…」
「バカ!!自分も調子悪いのに、そんなとこで寝てたらダメだろ!!」
俺は慌ててベットから出て安奈の顔を覗き込む。
「あ、でも…調子悪くなったのは朝方だし
それに、他に寝る所無いし…」
「あ…」
そうだった。このマンションは仮の住まい。1Kの小さな部屋だ。
ソファーも無ければ、予備の布団も無い。
おまけに床はフローリングで、とても安眠出来る場所じゃない。
「すまなかった」
「うぅん。そんなのいいの。
あたしね、ホントは蒼君の隣で寝ちゃおうかなって思ったんだ。
でも、蒼君が眼を覚ました時、あたしなんかが隣に居たら迷惑かな…って」
「どうしたんだよ?安奈ちゃんらしくないな。
毎日、強引に押し掛けて来てるくせに…」
すると安奈は苦笑いを浮かべながら「それとこれとは違うよ」なんて言う。
「どう違うんだ?」
「だって…隣に寝ていいのは、彼女だけでしょ?」
熱のせいなのか?それとも…
潤んだ瞳が切なく揺れる。
「安奈ちゃんがそんな事言うと調子狂うだろ?
とにかく、俺はもう大丈夫だから、ベットで少し寝た方がいい。
今、シーツ変えるから…」
立ち上がりシーツを外そうとしてかがんだ瞬間、俺の背中に熱い体温を感じた。
「シーツなんて、変えなくていいから…
今だけ…蒼君の彼女に…して?」
「あん…な…」
「お願い…あたしと一緒に…寝て?」
「……!!」