涙と、残り香を抱きしめて…【完】

俺は最低の男かもしれない…


辛うじて、その自覚はあった。


だが、俺のパジャマのボタンを外していく安奈の手を止めようとはしなかった。


これは浮気なんかじゃない。
星良と幸せになる為に必要な行為なんだ。
安奈と切れば、心置きなく星良と結婚出来る。


それに、安奈も望んでるんだ。


そんな自己防衛とも思える身勝手な理由をつけ、俺は安奈を抱こうとしていた。


パジャマの最後のボタンが外されると、俺は安奈を抱きしめ体を反転させ彼女の上になった。


安奈の胸が直接俺の肌に触れ、その柔らかい感触をもっと感じたくて手を伸ばす。


そして、もう片方の手で頬を撫でながら何度もキスを繰り返した。


お互い熱があるせいか、触れ合う肌は燃える様に熱く、荒い吐息も熱を帯びている。


それがまた一層、刺激的だった。


愛が無くでも、十分、反応するこの体。
男ってヤツは、つくづく便利な生き物だ。


安奈の弾力のある若い肌に魅せられ、徐々に興奮する俺自身。暫く女性に触れていなかったせいか、欲求は果てしなく膨れ上がり、夢中で愛撫を繰り返していた。


子供だと思っていた安奈に、こんなに色気を感じるとは正直思わなかった。


いよいよか…


安奈の内股を割り、ゆっくり体が交わる。
だがその時、安奈の表情が苦痛に歪み小さな声が漏れた。


「うっ…痛い…」


嘘だろ?


「まさか…初めてか?」


無言でコクリと頷く安奈を見て、驚きで俺の動きが止まった。


「どうして言わなかった?」

「言ったら、蒼君は抱いてくれないと思ったから…」

「当たり前だ!!初めてだと聞いたら、こんな事…
やはりダメだ。安奈ちゃんを抱く事は出来ない」

「イヤ…イヤだよ…お願いだからやめないで。
初めてだから、大好きな蒼君にって思ったの…

後悔なんてしない。迷惑も掛けない。
初恋の人に、あたしの初めてを貰って欲しいの…」


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