涙と、残り香を抱きしめて…【完】
そんな…どうしてマダム凛子がここに?
まさか、今の仁との会話聞かれたんじゃあ…
今度は冷や汗が背中を伝う。
「仲良くお話ししてるとこ申し訳ないんだけど、島津さん、ちょっと来てくれる?」
「は、はい…」
マダム凛子の登場で、仁がどんな反応をするか気になり顔をチラ見したけど、全く動じる様子もなくファイルから眼を逸らす事はなかった。
「こっちよ。早く来て」
「はい」
渋々、マダム凛子の後を付いて行くと、大きな扉を開け中へと入って行く。おそらくここがオープンすれば、披露宴会場に使われる場所だろう。
そして、中に入った私が見たモノは…
「わぁ…」
そこには、様々なデザインのウエディングドレスを着たマネキンが整然と並び、まさに圧巻の光景。
華やかなカラードレスは、パステルカラーの淡い色合いの物から、パープルやレットというビビットな物まで幅広く揃えられている。
でも、ウエディングドレスと言えば、やっぱり純白のドレスだ。
天井から降り注ぐライトの光に反射し、キラキラと煌めくビーズやパール。
使われている素材も最高級のものばかり。
上品で強い光沢のオーガンジー
とろける様な柔らかさを感じるジョーゼット
美しいドレープを作りだしているシフォン
その他にも、色々な素材が眼にとまる。
その素材に施されたレースの種類も純白からアイボリー系と様々で、カットレースや総レースまで手間の掛る仕立てになっていた。
一着のドレスに、これほどの多くの異なる素材を使っているにも関わらず、どのドレスもバランスが良く自然で、クオリティーの高さを感じてしまう。
そして、なんと言ってもデザインの素晴らしさは言葉では表現出来ないほどだ。
定番のプリンセスタイプやAライン、大人の雰囲気を醸し出しているマーメイドやスレンダー。基本は馴染みのある形だけど、今まで私が眼にしてきたドレスとは明らかに違っていた。
女性の体を最高に美しく見せる為の絶妙な技があらゆる場所に見受けられ、計算し尽された曲線と装飾のバランスには、センスの良さ光る。
リボン一つでも、その形や位置で雰囲気が全ったく違ってくるだ…
それに刺繍に関しては、思わずため息が漏れるほど繊細で、技術力の高さにに衝撃を受けた。
これが、世界で活躍するデザイナー
マダム凛子の実力なんだ…