涙と、残り香を抱きしめて…【完】
「新井君に、マダム凛子の事務所スタッフを何人か飲みに誘えって命令しといたから、そこで東京での成宮さんの行動を探ってみるわ」
「えっ…マジ?」
「もちろん!!名古屋メシって結構評判らしいから、食い付いてくるスタッフはきっと居るわ。
お酒をたらふく飲ませて聞き出す予定。
だから、飲み代は経費で落としてね」
「え゛っ…」
経費で落とせって…明日香さんめちゃくちゃな事言うなぁー…
最終確認するのは仁なのよ。どうやって誤魔化そう…
そして新井君は明日香さんの命令通り、マダム凛子の事務所スタッフ3人と飲み会の約束をして戻って来た。
「今夜7時に、この近くの居酒屋でって事で…」
「新井君、よくやったわ。褒めてあげる」
「でも、長身で30代のイケメンなんて、西課長に凄い条件出されちゃったから探すのに苦労しましたよー」
はぁ?明日香さんったら、成宮さんの事にかこつけて合コンするつもりだったとか?
「もう!!余計な事は言わなくていいの!!
せっかくタダで飲ませてやろうと思ったのに…
新井君は会費1万ね」
「ひぇ~そんなぁ~勘弁して下さいよ」
よく言うよ。飲み代は経費で落とすつもりのくせに…
シラッとした眼で明日香さんを見ると、彼女がほくそ笑み私の耳元で囁く。
「星良ちゃんは来ちゃダメよ」
「えっ?どうして?」
「バカねぇ~当然じゃない。
成宮さんの女関係を聞き出すのに、そこに彼女が居たらスタッフの人達も遠慮して本音で話せないでしょ?」
「…あ、そうか…」
「それに、若い星良ちゃんが居たら、私が目立たないじゃい」
「うっ…」
それが本音か…
と、いう事で、私は大人しくマンションでお留守番。
明日香さんからの連絡待つ事になった。
しかし待ってる時って、どうしてこんなに時間が経つのが遅いんだろう。
時計の針が1分進むのに10分掛ってるんじゃないかと思うほどだ。
そして…深夜2時
静まり返った私の部屋に、待ちわびた携帯の呼び出し音が鳴り響いた。